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展覧会の感想、適応障害で休職中の日々の日誌など。気持ちの揺らぎを見つめて自分のハンドリング方法を模索しています。

ルーベンス展の初日に行ってきました

10月の上野は展覧会ラッシュですね。
フェルメール展に引き続き、ルーベンス展の初日に行ってきました。

公式サイトは下記から。
ルーベンス展-バロックの誕生|TBSテレビ

着いたのは13:00過ぎぐらいです。
混雑感は、どの絵にもある程度の人数がいるくらいでした。
いつも言ってるかもしれませんが、箱が大きいと圧迫感が軽減されるのでありがたいですね。
今回は大型作品が多かったので、仮にものすごく混雑して遠目で観ることになっても、一定の満足感は得られると思います。

展示室に入る前の空間では、ルーベンスの作品がある教会や作品を紹介する映像が流れています。
普段わたしは割とこういうのはスルーしがちなんですけど、パイプオルガンの荘厳な音が響いてきたのに心惹かれたので座って最後まで観ました。

フランダースの犬でお馴染みのアントワープ聖母大聖堂も登場しましたが、本当に綺麗な建物ですね。
アントワープ大聖堂」でGoogle検索をすると360°ビューが色々見られるのですが、映像で印象に残ったアングルはだいたいこの辺りです。
ゴシック建築の特徴である細くて高い柱や明るい光が差し込む構造がわかりやすいです。


(スクショしました。実際の映像で見るともっと荘厳で美しいですよ!)

完全なる余談ですが、フェルメール展で観た、様々な教会の細部を自由に組み合わせたエマニュエル・デ・ウィッテの作品《ゴシック様式プロテスタントの教会》はプロテスタントの教会ですが、アントワープ大聖堂教会はカトリックの教会です。


エマニュエル・デ・ウィッテ《ゴシック様式プロテスタントの教会》1668年、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(参考作品)

この絵が頭の中にあったので、アントワープ大聖堂教会の映像が流れた瞬間に「あ、ゴシック建築…」と気づけたのでした。

体力と気力が必要な展覧会

作品が大きく、また宗教の凄惨な場面を扱っているものも多いため、本展覧会を観るためにはかなり体力と気力が必要であると感じました。

今回のルーベンス展は、フランドルの偉大な画家ルーベンスのイタリア滞在に焦点を当てることで彼がイタリアから何を得たのかという部分を浮かび上がらせる、という大枠になっています。

古代の模倣から同時代の画家(カラヴァッジォなど)まで、ルーベンスがイタリア滞在で得たものが非常に広範にわたるため、正直知識も必要になります。
神話や宗教説話が少しでもわからないとわからない、みたいな部分もあります。
そういう意味ではかなりカロリーの高い展覧会だなと思いました。

ルーベンスフェルメール

注目すべきは、ざっくりしたカテゴリで言えばルーベンスフェルメールは同じバロックの画家であるという点です。
主に宗教画や祭壇画をメインにしたルーベンスに対して、フェルメールは主に風俗画の画家として知られています。
テーマは異なりますが、人間のあるシーンを光と影の対比を用いて浮かび上がらせるという点では確かに共通の何かはあるかもしれません。

とはいえ、ルーベンスの生没年(1577-1640)とフェルメールの生没年(1632-1675)の間にはネーデルラントとスペインの長きに渡る八十年戦争(1568-1648)があり、その戦争を経てネーデルラントはベルギーとオランダに分かれて独立したという歴史があります。

そういう意味でいうと、年代的にはルーベンスはフランドルの画家であり、フェルメールはオランダの画家なんですよね。
(この辺りはいつも難しいなあと思っています)

もともと毛織物産業や商工業で栄えていたフランドルやアントウェルペンから、八十年戦争の最中に難民として彼らが大量にホラント地域に流入したことや、日本との独占貿易を始めとした海の覇権を手にしたことで、17世紀のオランダは黄金時代に突入します。

宗教対立が巻き起こっていた時代に古代やルネサンス人、そして同時代の画家から学びを得た後に宮廷画家や外交官として生きたルーベンス
市民生活が発展した中で、独特の陶器の製造で有名になった街デルフトで生涯の多くを過ごし、贅沢にラピスラズリを使えるほどパトロンに恵まれながらも、晩年は貧困にあえいだフェルメール

同じバロック様式であり、同じ(広い意味での)ネーデルラントの画家である2人の作品が上野で同時期に観られるというのは、考えれば考えるほど贅沢なことであると思いました。
体力は必要ですが、17世紀ネーデルラントの懐の広さをぜひ両展覧会で堪能してほしいです。

ルーベンスルノワール


ルーベンス《神々の会議》1622-24年、ルーヴル美術館(参考作品)
The Council of the Gods, 1622 - 1624 - Peter Paul Rubens - WikiArt.orgより引用


ルノワールルーベンス作 神々の会議の模写》1861年国立西洋美術館
ピエール=オーギュスト・ルノワール | ルーベンス作「神々の会議」の模写 | 収蔵作品 | 国立西洋美術館より引用

同時代人からもさることながら、古典、ルネサンスから多くの知見を得たルーベンス…を模写したルノワールの作品が展示されていました。
時代が進む中で、ルーベンスの作品もまた画家を志す者が学ぶべき存在になっていった、という部分に非常にロマンを感じました。

どちらもなんですけど、ごく単純な話ですが画面に神々がたくさんいるという構図がいいですね。
詳しくないのでアレですがアベンジャーズ的な感じといいますか…

今回のルーベンス展では「絵筆の熱狂」という章があり、そこでは感情表現の一環として筆致が荒々しい部分がある、という説明がなされています。
ですがやはりそこは同じバロック期の中で比較しての話なので、この《神々の会議》の画面のマティエール自体も比較的つるりとしている印象でした。
しかし描き込みはものすごく精緻、非常にリアルであると言えます。
※会場ではパネルでの展示なので、あくまでそれを観た印象です。

ルノワールの《神々の会議》は現物展示です。
見比べた時の圧倒的な色彩感はさすがですね。
筆さばきも大きく、より大胆な印象を受けました。
布の質感とかもよりフラットで大雑把な描き方なのに、きちんと布としての質感が示されています。
筆致が大きいことによって「絵である」ということがはっきりはしているんですが、平坦でのっぺりとしているようには見えないんですよね。

なので、「絵画のイリュージョン性」とでも
言えばいいのでしょうか…「ないものをあるように見せる」という点ではどちらも甲乙つけがたいなと思いました。
魅せ方、描き方の変化をぜひ会場で見比べてみてください。