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展覧会の感想、適応障害で休職中の日々の日誌など。気持ちの揺らぎを見つめて自分のハンドリング方法を模索しています。

ミュシャ展 運命の女たち@静岡市美術館③『装飾資料集』の芥子の花とお土産

前々回・前回はこちらから。

静岡展の特別展示・OGATAコレクションの『装飾資料集』

今回はこれを観たくて行ったと言っても過言ではありません。
OGATAコレクションについては公式HPに説明があります。

世界一のミュシャコレクターであった土居君雄氏(1926-1990)※のもと、長年ヨーロッパに在住し、ミュシャ作品を収集、コレクションの形成に携わった尾形寿行氏(現在は静岡市在住)。土居氏亡き後はその遺志を継ぎ、現在は尾形氏がミュシャ作品の世界的な収集家として知られています。本展では尾形氏の厳選したミュシャ作品(OGATAコレクション)から、アール・ヌーヴォーのパターンの教科書とされる『装飾資料集』全72点を含む計100点を、静岡展のみ特別に展示します。
※ドイカメラの創業者。そのミュシャコレクションは「ドイ・コレクション」と呼ばれている(現在は堺市に寄贈)。

『装飾資料集』とは、ミュシャが1902年に出版した、ミュシャ自身が女性の表情や装飾パターン、モティーフなどをまとめて出版したもので、現代で言うところのデザイン集のような感じのものです。

デザインという自身の根幹とも言えるような部分を割とあっさりまとめて出版してしまうところがすごいなと私は思ってしまいますが、どうも後進のための教科書的な意味合いもあったようです。
(後にミュシャは『装飾人物集』も出しています)

また、ウィリアム・モリスを高く評価していたという辺り、自分自身の利益の独占よりも、世の中が良きデザインで満たされてほしいという思いもあったかもしれませんね。

ミュシャが描く装飾的な芥子の花

展覧会の記事に関しては「複数の展覧会をハシゴしている気分」を大事にしています。
また、個人的な趣味で、複数の展覧会を繋ぐ鍵のひとつとして「芥子の花」というモティーフに着目しています。
これまで、「眠りの神ヒュプノスの持物」としての芥子の花、ゴッホ・モネ・ルドンそれぞれが描く芥子の花、小林古径の芥子の花について紹介してきました。

今回は『装飾資料集』で見つけた、ミュシャの描く装飾的な芥子の花について触れたいと思います。
『装飾資料集』には素描風、デザインとしての作例の2種類の芥子の花が書かれています。
※いずれも千足伸行ミュシャ 装飾デザイン集 『装飾資料集』『装飾人物集』』(東京美術)から引用しています。


図録(書籍)の撮影なのでいまひとつなのですが、雰囲気だけ感じ取ってもらえると…
ミュシャが植物としての芥子の花を出発点にしてデザインへと昇華していく過程が見えるようで面白いですね。
有名な作品のひとつに《ビザンティン風の頭部》があるように、ミュシャが古来の装飾に心惹かれていたことは明らかです。
(後半で紹介する公式図録の表紙が《ビザンティン風の頭部・ブロンド》の装飾皿です)

ですが、この2種類の芥子の花からは、古来のデザインをそのまま模倣したのではなく、一度きちんと「生きる植物」の構造を理解することを経由して装飾に置き換えるという過程を踏んでいることが示されています。
私はここに、あくまでデザインは仕事であり本業は画家であるということと、受けた仕事に自分の出来ることを全て注ぎ込むという、ミュシャの2種類の矜持を感じました。

ミュシャ展のお土産

ポストカードがいっぱいあって迷ったのですが、最初のエントリでも触れた《スラヴィア保険会社》と《ヒヤシンス姫》を選びました。

そして図録や書籍が充実していたので2冊も買ってしまいました。

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公式図録はトートバッグのセット販売があったのでトートバッグも買いました。
トートバッグの方は《ビザンティン風の頭部・ブルネット》になっているのも心憎いですね。

あとは『装飾資料集』に関する図録が欲しかったので、今回の参考文献でもある千足伸行先生のこちらの書籍を買いました。

会期ギリギリでしたが、行って本当に良かった展覧会でした!
装飾繋がりで、高崎のウィリアム・モリス展にも行きたいですねえ…

参考文献

千足伸行ミュシャ 装飾デザイン集 『装飾資料集』『装飾人物集』』東京出版、2017年