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展覧会の感想、適応障害で休職中の日々の日誌など。気持ちの揺らぎを見つめて自分のハンドリング方法を模索しています。

ミラクルエッシャー展の感想①星・風景・水を手掛かりに

ミラクルエッシャー展@上野の森美術館に行ってきました。
この日は監修者の熊澤弘氏による講演会が行われるため、朝から整理券をもらいに頑張って並んできました。

ミラクル エッシャー展 公式ホームページ | 見どころやチケット情報など

この本の感想でも書いたのですが、私は画面そのものを観る力が弱いので、エッシャーのようなトロンプ・ルイユの作品は「眼の楽しみ」は自力で掴みづらいんですよね。
ですが、まとまった数でエッシャーを観られる機会もそうそうないと思ったので、講演会で概要を掴んでから展覧会を観ようという作戦を立てました。

…のですが、1時間前でも前に30人以上整理券待ちの方がいた上、あまりにも私の後ろにも長い行列ができていたので、先に展覧会を観てから講演会を聞くことにしました。
グッズも買いたかったですしね。
エッシャー人気にちょっとびっくりしました。

上野の森美術館はいつもキュレーションが面白いなと思っています。次はフェルメールですしね。
こうして講演会を開催してくれるのもありがたいです。

あと個人的にですがサカナクション「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」がテーマソングなのも嬉しいですね。
とことんイメージ戦略が上手いと思います。

幸い1ロット目で入れたので序盤は比較的ゆったり観られましたが、やはり後ろからがんがん人は増えるので、手早くモードで観てきました。
でも版画なので本当はもう少し気に入った作品は近くでゆっくり観たくなりますね。

科学・聖書・風景・人物・広告・技法・反射・錯視という8セクションでエッシャーを解くという構成になっています。

例によってエッシャー著作権上引用が難しいので、公式のWebページと交互に見て頂けると嬉しいです。
M.C. Escher - The Official Website
(英語表記なのですがgallery> periodで見てもらうと探しやすいかと思います)

エッシャーにおける星

《星》1948年(多色刷り木口木版)
《二重の惑星》1949年(同上)
《重力》1952年(リトグラフ水彩、手彩色)
※ gallery> period>back in Hollandで見られます

科学セクションではこの辺りが軒並み結晶体のような星の形が描かれていて気に入りました。
解説では異母兄が結晶体の研究をしていたようなので、エッシャーは結晶の中に小さな宇宙ー惑星としての星を見たのかもしれません。

面白いのが《重力》で、小さな宇宙の星の中にも重力があると考えていたところですね。
後半セクションの錯視に出てくるように、エッシャー自身が重力を意識して解放しようと思いながらも、小さい宇宙の中にまで重力があると想定しているところが興味深いなと思いました。

一方、風景や技法のセクションにも星が登場しますが、こちらの星は極めて「風景的かつ自然科学的」という印象ですね。

風景セクションの《夜の微光》1933年(リトグラフ)では北斗七星、技法セクションの《水没した聖堂》1929年(木版)ではオリオン座が描かれています。
きちんと何座かわかるように描かれているというのが「風景的かつ自然科学的」だと思った理由です。
この作品たちはどちらもちょっと地味めな位置にあるのですが、会場でぜひ本物を観てもらいたい作品です。

風景画と旅は切り離せないシリーズ

また手前味噌なのですが「展覧会をはしごしている気分」を目指して記事を書いている身としては、やはりフランス風景画に力点を置いたプーシキン美術館展とこちらの風景セクションは比較という気持ちで観てしまいました。

エッシャーは1922年のイタリア旅行を皮切りに旅行を繰り返し、同年9月にアルハンブラ宮殿と出会い、そして1920年代後半から35年まではローマに定住しました。
やはり画家にとっての旅って大きいんですね…現代よりも交通手段や記録手段が限られているが故に、より印象深く画家の人生に影響を与えたのかもしれません。

旅行〜ローマ滞在間の風景画は以前の記事で書いたカナレットのような精緻さもあります。
ですが、木の並び方や建物の石組みの描き方などから、エッシャーの関心ごとがすでに規則的な模様にあるという匂いが感じられて面白いなと思いました。

※ gallery> period>Italian periodで見られます。

わかりやすいのは風景セクション冒頭の《サンジミニャーノ》1922年(木版)でしょうか。木の並びが特徴的です。

あとは自分はつくづく夜の風景画が好きなんだな…と思ったのが《夜のローマ「トラヤヌス記念柱」》1934年(木版)と、セクションまたぎになりますがこの時期に描かれた《花火》1933年(木版)です。

どちらも画面だけの印象で観るとちょっと浮世絵っぽい感じもあるんですよね。構図ですかね…
特に《花火》は広重の両国花火よりも研ぎ澄まされた構図で、わあ綺麗!と素直に思いました。

反射と水

反射というセクションが、作品数が少ないながらエッシャーの(特に)水への映り込みへの関心を良く表していて面白かったですね。
エッシャーはトロンプルイユ、錯視、階段やメビウスの輪のような無限性や変容していくモティーフという印象が強かったのですが、それとはまた異なる眼の錯視を示していました。
エッシャーは変容や規則性に関心を示すと同時に、眼に映るもの全てをとことん面白がって平面に描き表していた人物なのかもしれないと考えたのが《3つの世界》1955年(リトグラフ)です。


気に入ったのでポストカードを買ってしまいました。
画面外の木々、水面の表面に浮かぶ葉と映り込む木々、水面下の魚という3つの世界が想像できます。
繰り返されるモティーフとしての魚とは違い、この魚だけは妙にリアルなのが面白いですね。

まとめ

全体的に、エッシャーはトロンプ・ルイユだけではないということが浮かび上がってくる貴重な展覧会だと思いました。
私の独断と偏見かつ短時間で星・風景画・水をピックアップしただけでもエッシャーの関心ごとが多岐に渡っていることがわかります。
ただ人気な分、恐ろしく混む展覧会でもあるのでそこはちょっと対策が必要かなあというところですね。平日はまた違うのかもしれませんが…

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無事に整理券もお目当てのお土産も入手できたので、御徒町のパルコヤまで歩いてDEAN&DELUCAのコラボメニューを飲みながらざっと感想をまとめました。

これから講演会を聞いてきます。
多分また話を聞いたらエッシャー像が変わるかもしれませんが、ひとまず自分で感じたことを残しておきたいと思います。

【続きを書きました】
講演会の感想とおみやげの話です。