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展覧会の感想、適応障害で休職中の日々の日誌など。気持ちの揺らぎを見つめて自分のハンドリング方法を模索しています。

名作誕生ーつながる日本美術展@東博(+仁和寺展)

日本美術に詳しい友人にお願いして、ついに日本美術デビューしてきました。彼女に歴史をガイドしてもらいつつ見どころを教えてもらいながら観てきなので、なんというか頭の動かし方とか着目点のヒントが掴めた気がします。

厳密には春に仁和寺と御室派のみほとけ展もひとりで行ってはいたんですけど、びっくりするほど見方が分からないという事態に陥ったので感想なんてとんでもない、と放置していたのでした。
もう少し大学で幅広く勉強しておけばよかったなあとトボトボ帰ったのを覚えています。


仁和寺観音堂を再現した章のみ撮影可だったのでいくつか撮ってはきたのですが、感想が「彩色が全て残っていたらもっと煌びやかで、さぞやありがたみと極楽感のある空間だったんだろうな」くらいしか思いつかなかったのです…
あと、わーっとたくさん仏像を観た上で、私は明王などの怒りの表情が入ってくる時代の仏像が比較的好みなのかなと思いました。

あとこの写真は、向かって1番左手の像の案外お尻が可愛いっていうしょうもないことしか頭に入らなくて撮った写真です。せっかくなので載せます。

つながる日本美術展で学ぶ日本美術の捉え方

ここからが本題。
名作誕生ーつながる日本美術展
※今回は画像は特に断りがないものはこちらからお借りしています。

色々友人に教えてもらいながらゆっくり回ってきたんですけど、ポイントのひとつは「誰がパトロンだったか」みたいですね。
パトロンがざっくり貴族か武家かをわかっているだけでも理解が深まりそうです。
なので、日本史はマンガでわかる日本史でもう一回叩き込んでおいた方が人生楽しくなりそうだなと思いました。

あとは今回の展覧会が型の誕生→その後の発展にフォーカスしていたのもあり、「型を覚える」「誰が型を作ったか(orどのタイミングで型が出来たか)」辺りも大事だと思いました。

割と私が普段西洋美術を捉える際に頭の中で考えている方法に近く、友人の解説もあったのでかなり楽しめました。
西洋美術、特にロマン主義以前くらいまでで言うところの図像の見方と同じかもしれません。

いわゆる日本美術の人物のお約束というかテンプレ的なものの話も面白かったですね。
お坊さんや高貴な人物の顎はもっちりふっくらしているって分かるだけで、みっしりした洛中洛外図屏風もじっくり楽しく観られるようになります。

岩佐又兵衛洛中洛外図屏風》江戸時代(17世紀)、東京国立博物館 ◉国宝

あと、文脈が違うのであれですが、これだけ都市労働者が描かれているというのも結構面白いですよね。
先日のプーシキン美術館展だと、都市労働者や都市の人々が描かれるということ自体がフランス美術史としては革新的だった、みたいな雰囲気が醸し出されていたので、やっぱりちょっと日本って変わった島国なんだなと思いました。


ルイジ・ロワール《パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)》1885年、プーシキン美術館(参考作品)

都市労働者の例で言うとこんな感じですかね。
19世紀の話です。

それでも、ビジュアルで神や仏の教えを説いたり、都市の繁栄をアピールしたりするという部分は、離れた土地でも人間の考えることは同じなんだなと思って、なんだか愛しいような気持ちになりました。

雪舟水墨画

今回の展覧会での目玉というか「型を作った人物」のうち、個人的にインパクトがあったのが雪舟若冲でした。
今回の目玉作品としては国宝《天橋立図》なのですが、私は《唐土勝景図巻》が好きでしたね。


雪舟(伝)《唐土勝景図巻》室町時代(15世紀)、京都国立博物館(一部抜粋)
京都国立博物館 収蔵品検索システムから持ってきました。

この部分はだいたい真ん中よりちょっと右側だったと思います。
家々とか船の描き方の一発で決めた感やミニチュアが集まっているような俯瞰視、塗らないことによる奥行きがいいなと思いました。
今回画像で上手く載せられなかった、五重塔部分の書き込みとの対比も印象的でした。

また西洋美術との比較になってしまいますが、水墨画の余白も使った一発勝負感と、油彩の全てを塗りつぶす意気の厚塗りって、対極だけどどちらも別種のヒリヒリ感ですよね…良い…
どちらにも良さがあるので、現代芸術家は、画材の選択から意識的にやってる人が多いのもなんとなくわかる気がします。

(もしくは作品のコンテクストは作者が語る時代なので、意識的にやらないと「勝負」にならないんですかね…現代って、ものに溢れたが故の選択することに価値がある時代なのかなと現代美術に触れるたびに思ってますけど、まさか雪舟でその感を深めるとは思いませんでした。)

人生初・若冲

まさかの人生初の生若冲でした。
今までは若冲展4時間待ち…ふーん…って感じだったんですけど、確かにこれはすごいからみんな生で観たいですね…

《白鶴図》は鶴の透明感のある羽と梅の花のぽってり感、《雪梅雄鶏図》のしっとりした雪の質感と鶏の肉厚な羽がすべて同じ「白」で描かれていることが衝撃的でした。


伊藤若冲《白鶴図》江戸時代(18世紀)
※これだけちょっと出自の微妙な画像です…うーん日本美術の引用の作法がわからない…

左側が羽と梅の対比ですね。限りなく軽やかな羽と、ポンと置いたような梅の花。ちょっとこの画像だと梅の花がわかりにくいので、ぜひ生で観て欲しいです。


伊藤若冲《雪梅雄鶏図》江戸時代(18世紀)、両足院

当たり前ですけど、鶏の羽と鶴の羽は違う。鶏の羽の方が肉厚で毛が詰まってる感じがします。
椿の赤と鶏の鶏冠の赤もやっぱり微妙に違いますね。

伊藤若冲《仙人掌群鶏図襖》江戸時代、西福寺 ◎重要文化財

鶏とサボテンの組み合わせが天才的です。
ちょっと調べてみたら江戸時代の初期にサボテンは日本に入ってきてたみたいなのですが、そういう珍しい植物を鶏と一緒に描こうと思ったこと自体がそもそもすごいなと思います。

確か江戸時代って朝顔の交配ブームが起きていたようですし、時代としても面白い植物に対する関心が高かった時期なんでしょうね。江戸時代って思っている以上に変化に貪欲な時代だなあと思いました。

実物か何かで描かれたものか、どちらを観たかは謎ですが、ともかく若冲がサボテンを観る機会があったという事実にもロマンを感じます。

向かって左から1番目と3番目の襖に描かれた小さいひよこちゃんと大人の鶏の対比も心憎いですね。そういうのが、きゃわわ!心をくすぐるというのを分かられている気がします。天才。

これからの楽しみが増えました!

帰りに友人が日本美術の1冊目の本として山口晃「ヘンな日本美術史」という本を貸してくれました!

ヘンな日本美術史

ヘンな日本美術史

まだまだ知らないことがたくさんあるって楽しいなと思ったので、これからも長い目で、ジャンルに囚われず美術を楽しんでいきたいなと思いました。
常設展も一緒に少しだけ回ってもらったのですが、そこでも衝撃的な作品があったので、またそれについても書くつもりです。

【書きました!】

★おまけ:今回のお土産


鶏のハンドタオル。
こういう紐も愛しくて捨てられない病にかかっています。