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展覧会の感想、適応障害で休職中の日々の日誌など。気持ちの揺らぎを見つめて自分のハンドリング方法を模索しています。

「30歳までに何がしたい?」

「30歳までに何がしたい?」

かれこれ2年ぶりに再会した先輩に聞かれ、私は苦笑いしながら「今その質問はえぐすぎますって」と答えました。

ばやしこ、25歳11ヶ月。現在、適応障害にて休職中。
今回は、そんな私のこれからの仕事への気持ちを変える転機となった質問とその答えについての話。

大学時代・憧れの場所でのぽんこつ

私は、大学入学を機に某緑のカフェでアルバイトを始めました。
中学生の頃から通学で使っていた乗換駅のそのカフェが大好きで、大学生になったら絶対にそこで働くんだと勝手に決めていました。

無事に採用してもらい、都合5年間そのお店でお世話になりました。

働き始めてからすぐに、お客様の要望にぴったり合うものをお勧めできた時の快感にどっぷりハマりました。
一期一会という言葉を働く度に感じることができていましたし、常連さんとのやり取りも楽しいものでした。

ですが、要領が悪く繁忙店のスピード感にはなかなかついていけなかったため、決して優秀な人材ではありませんでした。
同期や後輩が次々と責任者になっていく焦りや悔しさもあり、辞めてしまおうと思ったことも何度もありました。

ぽんこつバイト、コーヒーへの情熱に目覚める

そんな私の転機になったのは、夏に販売するグラスドリッパーという器具で抽出したアイスコーヒーとの出会いでした。
当時、スピード感のなさに打ちのめされていた分、せめておすすめ力を強化しようと参加した勉強会で、すっかりこの器具の虜になったのです。

通常、仕事上でのテイスティングはコーヒープレスという器具を使い、ホットで行うのが基本です。
金属のフィルターを通すため旨味が逃げにくく、抽出者によるブレも少ないので、豆そのものの基本的な風味が掴みやすいからです。
また、ホットでテイスティングすると香りが立ちやすく、冷めてからの味の変化も捉えることができます。

一方、ハンドドリップかつアイスで抽出すると、果物っぽさや瑞々しさ、植物っぽさといった「生き物としてのコーヒー」という側面がかなりはっきり引き出されます。
私はこれにすっかりハマってしまいました。
さらに、同じ豆でも抽出者によって微妙に味が変わる面白さにも目覚めたのです。

早速自分でもグラスドリッパーを買い、狂ったように毎日ハンドドリップを試しては感想を周りに喋りまくっていました。


※この写真は当時のものではなく割と最近のものです。こんな風に氷と牛乳の上に濃いめのコーヒーを抽出すると美味しいアイスカフェオレができますよ!

そんな私に、当時の社員さんが「そんなに好きならばやしこ主催でグラスドリッパーの勉強会をやってみたら?」と声をかけてくれました。

恐らくお店のお荷物だと思われていた私が、初めて特別な仕事を任せてもらえたのです。
周りにも手伝ってもらいながら必死に準備し、その勉強会を無事に終えることができた時、やっと私も自分の強みと心から情熱を向けられる好きなことができたと思いました。

そこからやっと、だんだん仕事に自信が持てるようになりました。
結局責任者にはなれませんでしたが、新商品の豆が出る度に勉強会を頼まれたり、大きめのコーヒー豆に関するイベントを任せてもらえるまで成長することができました。

卒業するときに貰ったメッセージアルバムには「豆への情熱」「コーヒーへの情熱」という言葉で溢れていて、これは今でも私の支えになっています。


落ち込んだ時にこのアルバムを見ると元気が出てきます。ありがたいですね。

別カフェへ旅立つことを決める

就活するにあたっては色々なことを考えたのですが、やはり緑のカフェの仕事が大好きだったため、1年の就職浪人を経て、別のカフェへ新卒入社をすることを決めました。

「コーヒーと接客が好き」という情熱が別の場所でも通用するのか自分を試したかったこと、緑のカフェでできなかった店舗のマネジメントに挑戦したいと思ったことが、別のカフェを選んだ理由でした。

選んだカフェは経営理念が緑のカフェと通じるところに惹かれ、心機一転ここで頑張りたいと胸を躍らせて入社したのです。

ぽんこつ&くたびれ社員化

念願の正社員として店舗マネジメントに関わるようになったのですが、ここから売上や人員不足、そして緑のカフェを上回るスピード感との戦いが始まりました。

理念を店舗に落とし込む暇もなくがむしゃらに働くことが続き、いつしか働くことへの情熱は消え、ただその日を無事に乗り切れることを祈るだけになりました。

また、会社側のコーヒーに対する比重が思っていたよりも低く、マシンで効率的に落とす技術ばかりが進んでいくことも不満でした。

当然スピード感にもついていけず、だんだん疲れ果てて、最低限の身だしなみとして洗面台で頭だけ洗って仕事着のまま出勤するようなことが増えていきました。

それでも、対面接客の楽しさだけは大事に抱えたまま仕事を続けていました。
最も忙しい朝のピークでも常連さんとのやり取りを欠かさないことだけが心の支えでした。

昇格、異動、結婚、そして休職へ

そんな私も2年目にはなんとか昇格し、同時に初めての店舗異動も決まりました。
また、この時期に結婚したため、さらにドタバタした日々が始まりました。

職域だけでなく職場や上長も一気に変わったため、辛いことは色々あったのですが、最も堪えたのは、唯一残っていた情熱である対面接客の機会が減ったことでした。

心身に影響も出始め、このままだと自分も夫もダメになってしまうと思い、1月の終わりに心療内科の扉を叩きました。
結果、適応障害と診断され、そのまま現在まで休職しています。

好きなことを仕事にしたはずなのに苦しい

休職してそろそろ4ヶ月が近づいてきました。
身体の不調も苦しいですが、それ以上に心の有り様に苦しめられています。
例えば、今も私にはお店のことまで考えられる余裕がなかったことが未だに悔しく、なかなかこの思いを手放せずにいます。

おまけに「好きなことを仕事にしたはずなのになんで上手くいかなかったんだろう」と、自分の不甲斐なさにイライラして、夫や周囲に八つ当たりを繰り返しています。

夫に次の仕事として勧められた公務員試験への挑戦も気分が乗らず、ついに勉強も放棄してしまいました。
人生設計として公務員は「大いにあり」ですし、支援してくれた夫の期待にも応えたかったのですが、どうしても自分の心が動かなかったことに罪悪感でいっぱいです。

まっさらな眼で自分を見つめて、見えた想い

ここで、冒頭の先輩の「30歳までに何がしたい?」という質問です。

この先輩は、緑のカフェ時代の先輩で、最も私の仕事のスタンスやコーヒーの情熱を理解してくれていました。
お互い卒業してからも、美味しいコーヒーのあるところに一緒に出かけては感想を言い合えるような関係を続けてきました。

そんな先輩と久々に会い、一緒にコーヒーを飲みながら当時の思い出話をしていた中で、「やっぱりばやしこのターニングポイントはグラスドリッパーの勉強会だったよね」と言われてハッとしました。

先輩と別れてからずっと、その場では答えられなかった「これから30歳までに何をしたい?」という質問について考えていました。

まっさらな眼で自分の気持ちを見つめて出てきた想いは「もう一度、情熱を取り戻した状態で働きたい」でした。

アルバイト時代のあの頃、私は接客の快感、そしてコーヒーが持つ多彩な風味とそれを引き出せるハンドドリップという技法に夢中になっていました。
夢中になって楽しんだ結果、たくさんの知識と自信を得ることができたし、元々好きだった対面接客がもっと大好きになりました。

私の本当に好きなこと・やりたいことは、自分で学んで理解した大好きなコーヒーを、お客様のニーズに合わせて自信を持って対面でおすすめできる環境で働くことでした。

「30歳までに何がしたい?」への答え

自分の正直な想いを踏まえて出した答えは「26歳の間にもう一度仕事として、ハンドドリップのできる場所でコーヒーと向き合う」です。

新鮮な情熱を取り戻した上でさらに自分を磨くために、今度はハンドドリップを極めたいと考えています。
だから、今のカフェでも緑のカフェもない、ハンドドリップができる場所を選ぶつもりです。

実際のところはまだ体調も安定していませんし、色々な悔しさや罪悪感をなかなか手放せず、心のハンドリングを取ることに四苦八苦していますが、先輩の質問と思い出話をきっかけに、ひとつ心のなかに情熱が戻ってきたのを感じています。

夫と穏やかに暮らすためにも、そして自分の健康のためにも、自分の気持ちに嘘をつかない場所で、お客様とコーヒーと向き合えたらいいなあと思います。

#わたしの転機

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